ものがたり

はるこの祇園祭 第六話「宵山(よいやま)のよる」

7月16日

 

祇園祭のはじまりは、ずっとずっとむかし。
平安時代。
疫病にこまった町の人たちが、なんとか病をおさめようと、神泉苑(しんせんえん)に66本の剣鉾(けんぼこ)をたてて、神様においのりをしました。

 

それから 何年も何年もかけて、町のひとたちの“ねがい”と“こころ“が どんどん かさなり、鉾は どんどん きれいに かざりつけられていきました。

 

そうして、見る人みんなをたのしませる、いまの山鉾になっていったのです。

 

 

 

 

山鉾のおひろめの日でもある宵山(よいやま)は、いよいよ大盛り上がり。

 

このとくべつなあいだだけ、四条通りは車をとめて人でいっぱいになります。

 

かきごおりやさんに
フランクフルトやさん。
ピカピカ光るふうせんやさん。
いろんなお店でにぎわいます。

 

夜になったら、もうすごいひと。
若いひと、年おいたひと、海をこえてやってきたひと。
あちこちに ちょうちんが かがやいて、お囃子の音があふれます。これぞ夏まつり。

 

 

こんちき こんちき こんちきちんー

 

 

祇園囃子のちょうしに合わせて あがるかけ声。
ちまきを手わたす女たち。
そこにあつまる町のみんなが「すこやかに、すこやかに」みんなの無事をいのっています。

 

あすは、いよいよ巡行。
おおきな山鉾が、町をねりあるきます!

 

「はれますように…」

 

はるこをつれだしてくれた、うみこさんとリュカさんが、そっと両手をあわせるのをまねて、はるこも 手をあわせました。

 

 

「はれますように…」

 

 

 

 

カリン! カロン! カラン!

 

 

はるこの耳にあの音がひびきました。
はっと目をあげると、あたりいちめんがかがやいて、夢のなかみたい。
おまつりが、はるこをつつんでいます。

 

 

カリン…カロン…

 

 

あっちのほうから聞こえた気がして、くるっとふりかえると、きらめく通りのその先に、ここからは見えるはずもない、八坂神社の石の鳥居(とりい)が見えました。

 

はるこはぎゅっと 浴衣のすそを にぎりしめました。

 

お父さんにも お母さんにも
ないしょにしとこう

 

はるこは なぜだかそう思ったのでした。

 

<つづく>

 

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