ものがたり

はるこの祇園祭 第五話「厄除ちまき(やくよけ ちまき)」

7月14日

宵山が始まりました!

 

 

「お姉ちゃんの生まれた町はな、厄除のちまきと、安産のはらおびをおわたしするねんよ。はるちゃんもいっしょにしいひん?」

 

かみをゆいあげ、あざやかな ぼたんの花をちらした浴衣をきて、うみこさんが、”ちまきうり”に はるこをさそってくれました。

 

「厄除のちまきどうですか〜」

 

元気なこどもたちの声に、道ゆく人も足をとめます。
いちばん大きな声は、ゆきちゃんです。

 

「どおですかあああ!」

 

はるこも、ゆきちゃんと同じくらいの声を出そうとがんばりますが、やっぱりちょっとはずかしくって……
「・・ちまき、どうですか・・・」
「はるちゃん、つぎ、いっしょにゆお。 そしたら はずかしないし」
「うん!」
「せーの」

 

 

「厄除のちまき、どおですかあああぁあ!」

 

 

「おじょうちゃんたち、元気やねえ、ひとつちょうだい!」
おばちゃんがもらってくれました!
「よかったねえ!」と うみこさん。

 

 

つつんだちまきを、うみこさんがていねいにわたします。その仕草が、うっとりするほどのきれいさで、はるこは思わず みとれてしまいました。
ちまきは、来年の夏まで、だいじに家のげんかんにかざられます。

 

 

みんなが、元気で一年すごせますように。

 

 

「はい、はるちゃん!」
うみこさんが、はらおび をわたしてくれました。
「はらおび はね、おなかのなかの赤ちゃんを、しっかり守ってくれるんよ」
はるこはきゅうに、むねがいっぱいになりました。

 

「…あんな、お母さんな、ときどきしんどいんやって。はらおび、お母さんのことも、守ってくれるやろか」
ちいさな声できくはるこに、うみこさんは、しゃがんで答えてくれました

 

「うん。守ってくれはるわ」

 

うみこさんは、はるこのほほをつまんで「そんなかお しいひんの」と言ってから、
「お姉ちゃんもおねがいしてんよ。リュカのこしがいたいの、なおりますようにって」
はるこは、ふふっと笑いました。うみこさんも笑いました。

 

 

どこかから、こどもたちの歌声がきこえます。

 

 

「あんざんの おまもりは これよりでます
ごしんじんの おんかたさまは
うけておかえりなされましょう
ろうそくいっちょう けんじられましょう」

 

 

みんな、元気ですごせますように。

 

<つづく>

 

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